第10章 恋、気付く時(ヒロイン視点)
一君に彼女が出来てから、極力一君と関わらないようにした。いつも隣にいた一君が傍にいないのは少し寂しかった。たまに校内で一君と彼女が仲良さそうに話してる姿を見かけた。楽しそうに笑う二人を見て心が和らいだ気もしたけど、それ以上に心がざわついた。それを振り払うように、サークルに行く日にちを増やし、バレーに打ち込んだ。そうすればその感情も消えてなくなると思っていたのに、それは徐々に私の中で膨らんでいった。その得体のしれない感情が少し怖かった。
日曜日、体育館の点検がある為部活が休みになった。久しぶりにのんびり過ごそうと朝から家でダラダラと過ごしていると、携帯が鳴った。液晶を覗くと
及川徹
休みの日に電話なんて珍しい。というか、電話自体が珍しい。もしかして点検が早く終わって部活やることになったのかな?なんて思いながら電話に出た。
『莉緒ちゃん今家?』
「そうだけど。何?部活あるの?」
『ちょっと外に出てきてくれる?今莉緒ちゃんの家のマンションのとこにいるんだけどさ。』
「え?なんで?」
『いいからいいから。』
なんで及川が家に?と思いながらも外に出た。
「やっほー!」
「やっほーじゃないし。何?」
「折角の休日だし、デートに行こう。」
「は?無理。」
「まあ、そう言わずにね。」
そう言って強引に私の手を掴んだ及川はそのまま歩き出した。振り払おうとするけど、力が強くて振り払う事が出来なかった。てか、私こんなラフな格好だし、このまま出掛けるとか恥ずかしいんだけど。なんて私の気持ちなんか考えもせず及川は歩き出す。