第10章 恋、気付く時(ヒロイン視点)
部活が始まり、代表決定戦まで約一ヶ月。青城祭も終わった事もあってか、いつも以上に集中してるように見えた。皆がどれだけ努力を重ね、どんな想いで試合に臨もうとしてるか、ここにきて、たった三ヶ月だけど、理解してるつもりでいる。皆と一緒に私も全国に行くんだ。
部活も終わり、今日も賢太郎に送ってもらおうと思ってたのに、賢太郎は用事があると言って、さっさと帰っていってしまった。なんだかんだ言って優しい賢太郎。だからそんな風に断られるとは思わなくて、少しショックだった。でも、用事があるんじゃ仕方ない。
「帰るぞ。」
久しぶりに一君からそう声を掛けらた。避けられてると思っていたから嬉しかった。でも、ふと彼女の顔が頭を過ぎった。及川が一緒といえど、やはり彼女からしてみれば私が一君といる事は喜ばしい事じゃないだろう。
「彼女に悪いから、私金田一達と帰るから!」
そう言って、部室から着替えて出てきたばかりの金田一の手を取った。それに一君は難しい表情を浮かべ分かったと言って、ぺちゃくちゃとうるさい及川を連れて帰って行った。
「金田一ごめんね。一緒に帰ってくれる?」
「勿論っスよ!」
「あれ?なんで橋口さんいんの?岩泉さん達と帰ったんじゃないんですか?」
遅れて部室から出てきた国見にそう言われた。
「だってさ、一応私女だし。及川いるけど、一緒に帰ってるって彼女が知ったら気分悪いでしょ?これから賢太郎がいない時一緒に帰ってもいい?」
「はい!」
笑顔で返事をしてくれる金田一、溜息をつく国見。
「その性格どうにかならないんですか?」
「どういうこと?」
「…何でもないです。」