第9章 彼女と最後の青城祭
舞台も順調に進み、物語は終演。
棺桶の中で横たわる莉緒ちゃんの傍に膝まづく。
「愛する人よ、死は君の息の蜜を吸い取ってしまったが、まだ君の美しさには力を及ぼしてはいない。君はまだ征服されていない。君にキスをしよう。望むべくはまだ君の唇に毒が残っていることを。」
莉緒ちゃんにキスをするフリをする。そして彼女の傍らにある小さな小瓶を手に取り、それを飲み干した。そして、莉緒ちゃんの隣に倒れる。そして、それを合図に莉緒ちゃんが起き上がる。
「全部飲み干して、あとを追う私に一滴も残してくださらなかったの?その唇にキスを。まだそこに毒が残っているかもしれない。私を殺して、あなたのキスで。」
そう言ってキスをするフリをした莉緒ちゃん。こんなに莉緒ちゃんの顔が近くにあるのは「何も知らないくせに。」と言われたあの日以来。あの時よりは莉緒ちゃんの事を知れただろうか。
そして莉緒ちゃんは俺の腰にある短剣で胸を刺し、その場へ倒れた。
『こうして二人の五日間の恋は幕を閉じました。』
カーテンが閉まり、ものすごい歓声と拍手。莉緒ちゃんと目を合わせ笑った。
こうして、莉緒ちゃんと過ごす、最初で最後の青城祭が終わった。
あまりにも楽しくて、今までだったら、それがおきないように気をつけていたのに、気が抜けてたのかもしれない。突如として現れた彼女の存在に俺は戸惑いを隠せなかった。