第9章 彼女と最後の青城祭
『モンタギュー家の一人息子ロミオは、ロザラインへの片想いに苦しんでいました。気晴らしにと、友人達とキャピュレット家のパーティに忍び込んだロミオは、そこで、一人の女性に出逢います。』
ミスコンの時とは違う、少し古風ではあるが、美しいドレスに身を包み、舞台へ上がる莉緒ちゃん。その莉緒ちゃんの姿に皆が息を呑んだ。
『キャピュレット家の一人娘ジュリエットとロミオはたちまちに恋に落ちました。そして仮面舞踏会の後、ロミオはキャピュレット家の果樹園に忍び込みました。』
「ああ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの。お父様と縁を切り、その名を捨てて。それが無理なら、せめて私を愛すると誓って。そうすれば、私はキャピュレットの名を捨てましょう。私の敵はあなたの名前。モンタギューでなくても、あなたはあなた。モンタギューって何?手でも足でもない。腕でも顔でも、人のどんな部分でもない。ああ、何か別の名前にして!名前がなんだというの?薔薇と呼ばれるあの花は、ほかの名前で呼ぼうとも、甘い香りは変わらない。だから、ロミオだって、ロミオと呼ばなくても、あの完璧なすばらしさを失いはしない。ロミオ、その名を捨てて。そんな名前はあなたじゃない。名前を捨てて私をとって。」
始まる前はあんなに文句を言ってたのに、見事にその長い台詞を言って見せた莉緒ちゃん。まあ、思い出し思い出し言ってるせいか、表情はだいぶ険しいけど。
「とりましょう。そのお言葉どおりに。恋人と呼んでください、それがぼくの新たな名前。これからはもうロミオではない。」
そう言って緊張した様子の莉緒ちゃんの手を取った。