第9章 彼女と最後の青城祭
クラスの片付けも終わり、後夜祭の打ち合わせもあって、莉緒ちゃんを迎えに行った。
「及川、焼肉今年は食べられなくて残念だったわね。」
意地悪な笑みを浮かべ上機嫌な莉緒ちゃん。まあ、普段あんなに笑顔をふりまかない莉緒ちゃんが笑顔をふりまいてると知れば、それ見たさに何度も並んじゃうよな。俺も買ったしスムージー。
「じゃあ岩ちゃん、莉緒ちゃん連れてくよ。」
「おう。」
「岩ちゃんちゃんとステージ見に来てよ!」
「おう。」
後夜祭は十八時半から。俺らが舞台に立つのは十九時。それまでの時間は演劇部の部室で読み合わせや衣装合わせ。緊張した面持ちの莉緒ちゃん。
「失敗もこの舞台の御賞味。皆やっつけでやってるのなんか知ってるんだから。ほら、一昨年なんか及川君相手に緊張した三年生が台詞ぶっ飛んだ挙句、及川君に告白しちゃうなんてこともあったし。」
「そんなこともあったね。懐かしいなー。」
「他の学年だと中身がこんなだってわかんないからね。一年生の時が一番モテてたんじゃない?」
「下田さんってサラッと毒づくよね。及川さん傷ついちゃうな。」
なんて過去の青城祭の失敗談を下田さんが話せば、少し緊張がとけたのか、少し表情が和らいだ。
「橋口さんは立ってるだけで充分存在感あるから大丈夫。ちょっとやそっとの間違いじゃ皆何も言わないわよ。」
なんて話をしているうちに、前座の吹奏楽部の演奏が終わり、演劇部と俺達の出番。