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【HQ】Egoist

第9章 彼女と最後の青城祭


「二人共グランプリおめでとう。はい、これ台本。一時間で覚えてね。」


 文化祭実行委員長であり、演劇部の部長である下田さんからロミオとジュリエットと書かれた台本を渡された。


「今年はロミオとジュリエットなんだ。」
「絶対、及川君と橋口さんだ、って思ってたから二人の雰囲気に合うかな、って思って。」
「ナイスチョイスだよ。頑張ろうね、莉緒ちゃん。」
「…ごめん、話が全然みえないんだけど。」
「ミスター青城とミス青城は、後夜祭で演劇部の舞台に主役として立つんだよ。だからその台本。時間ないから早く覚えないと。」
「そんなの聞いてない!ミスコン出るだけでいいって言ったじゃない!」
「あれー?言ってなかったっけ?ごめんね橋口さん、うっかりしてた。」


 そう言って笑う下田さんは確信犯であることは火を見るより明らかだった。後夜祭での劇の事を言えば、絶対莉緒ちゃんはミスコン受けなかっただろうし。


「まあ、伝統だから、諦めて覚えよう。」
「無理、絶対無理。私が頭悪いの知ってるでしょ!こんなの一時間じゃ無理!」


 期末テスト、一人だけ赤点で補習を受けることになり悔しそうにしていた莉緒ちゃんはどこへやら。自信満々に頭が悪いと、しかも大声で。普段の莉緒ちゃんならプライドもあるだろうしそんな事言わないだろうに。


「まあ、フォロー出来るところはフォローするからさ。」
「及川毎年これ一時間で暗記してんの?」
「え?うん。」
「及川のくせにムカつく。青城、皆頭いいから嫌い。」
「莉緒ちゃんだって編入試験受かったんだから、やれば出来るよ。」


 ムスッと膨れる莉緒ちゃん。諦めたのか台本を捲り、台本に目を通し始めた。


「じゃあ一時間後演劇部の部室にね。一回通すから。じゃあ二人共頑張って。」

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