第9章 彼女と最後の青城祭
「相変わらずお前ら二人一緒に歩くとすげー注目されるな。」
及川さーん!と可愛い声で名前を呼んでくれる女の子達にひらひらと手を振れば、黄色い歓声。莉緒ちゃーん!と野太い声に莉緒ちゃんは無表情。そして無視。それを見てその冷たい対応がたまらないと騒ぎ立てる男子達。午前中クラスで見たあの笑顔が嘘みたいに冷たい。ていうか、莉緒ちゃん、なんかちょっと元気ない?
「莉緒ちゃん、莉緒ちゃん。」
「何?」
「岩ちゃんとなんかあったの?」
マッキーとまっつんに聞こえないように、小さくそう囁くと、
「…なんか、最近一君に避けられてる気がする。」
ポツリと呟いたその言葉に驚いた。皆といる時はいつも通りと感じたけど、確かに言われてみれば、ここ最近は岩ちゃんと莉緒ちゃんが二人で一緒にいる所を見かけない。どちらかというと、狂犬ちゃんと一緒にいる事の方が多い気がする。それに、クラスの当番も、岩ちゃんと莉緒ちゃんは同じ時間に入ってると思ってたのに、違ったし。代わりに狂犬ちゃんが番犬してたけど。気のせいじゃない?なんて無責任な言葉は言えなくて、言葉に悩んでいると、ごめん、何でもないなんて笑ってみせる莉緒ちゃん。
「花巻!なんか甘いの食べよ!」
「お、いいね!」
マッキーの元に走って行った。
四宮さんとの件が片付いて、楽しそうにしていたのに。