第9章 彼女と最後の青城祭
「じゃあ及川、こんな時にしか役に立たない顔なんだからしっかり部費稼いでよ。」
と、いつも通り刺のある言葉を残し、腕相撲&記念写真と書かれたプラカードを持った渡っちと腕を組んでバレー部のテントを出ていってしまった莉緒ちゃん。
「いくら宣伝だからって、腕なんか組まなくてもいいのに!ねえ、まっつんもそう思うでしょ?」
「まあ、莉緒ちゃん楽しそうだしいいんじゃない?」
まあ、確かに今日の莉緒ちゃんは、周りの雰囲気にのまれてか、凄く楽しそうで、いつもだったら岩ちゃんの小言もしゅんとした顔で黙って聞くのに、今日は岩ちゃんの小言に不機嫌そうだったし。まあ、折角のイベントだし、楽しみたい気持ちはわかる。
「俺だって莉緒ちゃんと一緒にまわりたいのに。」
思わず口から漏れた言葉。殆ど無意識で、自分でもビックリした。その顔を見て何やらまっつんがニヤニヤしてる。
「まあ、明日もあるし、今日はがっつり稼いで下さいよ主将。」
そう言って、さっきまで岩ちゃんが座っていた席に案内されると、そこには女の子の長蛇の列。午前中の行列にも引けを取らない長さ。そして、女の子からの黄色い歓声。
「やっほー、皆来てくれてありがとう。」
そう言って手を振れば、女の子からまた黄色い声援があがった。この数の女の子達と握手して、写真を撮って、終わるのはいつになることやら。最後尾と記されたプラカードを持って出て行った沢内の姿は既に俺の目では確認出来ないくらい遠くへ行ってしまった。