第9章 彼女と最後の青城祭
バレー部のテントに到着すると、丁度最後の挑戦者が岩ちゃんに負かされた所。
「岩ちゃん、お疲れ様。まさかとは思うけど、」
「負けるわけねーだろ。」
そりゃあ、岩ちゃんが負けるとは思ってなかったけど、あの物凄い列を見れば、流石の岩ちゃんだって、疲れて負けてしまうかもしれないと少し、ほんの少しだけ思ってた。多分、それは列に並んだ奴も同じだったと思う。でも、岩ちゃんは負けなかった。それがチャンピオンとしての意地なのか、莉緒ちゃんを渡したくない一心なのか、はたまたその両方なのか。
「一君、お疲れ様。色々買ってきたよ。皆で食べよう。」
「おう、サンキュ。
変な奴に絡まれなかったか?」
「賢太郎がずっと一緒にいてくれたから大丈夫。」
「そうか。京谷、ありがとな。」
「っス。」
岩ちゃんは席を立つと、エナメルバックからジャージを取り出し、莉緒ちゃんに着せた。ジャージのチャックをきっちり上まで閉めて。
「…暑いんだけど。」
「店番してる訳じゃないんだから、そんくらい我慢しろ。」
その言葉に少し御機嫌ナナメの莉緒ちゃん。
「岩ちゃん午後はクラスの方?」
「ああ。」
「狂犬ちゃんも?」
俺の問い掛けを無視し、先程買ってきた唐揚げにかぶりついてる狂犬ちゃん。
「なんかあったらすぐ連絡しろよ。俺とすぐ連絡つかなかった時は京谷に連絡な。携帯は肌身離さず持てよ。後、バレー部の連中から離れない事。単独行動は禁止だからな。」
「はーい。」
「岩ちゃんは莉緒ちゃんのお父ちゃんですか。」
「あ?」
「待って、待って!顔殴るのはやめて!今から写真撮影なんだから!」
舌打ちをした岩ちゃんは、席について焼きそばを食べ始めた。俺も岩ちゃんの隣に座りたこ焼きを食べる。
遅れて、マッキーとまっつんもやってきて、自分のクラスの出し物であるクレープを持ってきたマッキー。そのクレープを嬉しそうに食べる莉緒ちゃん。そこに他のバレー部員達も集まってきて、皆でご飯を食べた。