第9章 彼女と最後の青城祭
午前中、六組は大盛況で、ようやく入れた休憩時間。お昼を取ったら、今度は岩ちゃんと代わって、及川さん握手会が始まる。莉緒ちゃんも午前中でクラスの当番は交代と聞いていたので、一緒にお昼を取ろうと五組に行くと既に莉緒ちゃんの姿はなかった。莉緒ちゃんにLINEをすると狂犬ちゃんのクラスにいるという事で、二年生の教室のある階へ向かった。が、直ぐに女の子達から囲まれ、その女の子達と共に二年一組へ。二年一組の教室を覗くと、教室の隅で楽しそうに狂犬ちゃんと話す莉緒ちゃんの姿。
「莉緒ちゃん、お昼もう食べた?」
「ううん、これから。」
「莉緒ちゃん、午後はどうするの?」
「部活の方の宣伝周り。」
「宣伝?」
「後輩達と一時間交代でデート。」
「何それ聞いてないんだけど。」
「一君に勝ったらこんな風にデート出来るよ、って宣伝して周るんだって。まあ、普通に青城祭まわるだけだけど。」
「俺とのデートの時間は?」
「及川とデートとか無理。」
先程までの笑顔はどこへやら。莉緒ちゃんはいつも通り。さっきみたいに、可愛い笑顔を俺にも向けてくれたらいいのに。いや、でもやっぱりダメ。あんな笑顔他の奴らに見せられない。やっぱりいつも通りちょっと無愛想な莉緒ちゃんがいい。
「賢太郎、食べる?」
莉緒ちゃんは食べかけのチュロスを狂犬ちゃんに差し出し、それを狂犬ちゃんはパクリと食べた。
「一君に何か買って行こう。」
そう言って三人で教室を出て、たこ焼き、焼きそば、焼鳥、フランクフルト、種類様々な食べ物を買い揃え、バレー部のテントへ向かった。