第9章 彼女と最後の青城祭
自分のクラスに戻り、女の子達に、すぐ戻ってくるからね、とウインクをすれば、黄色い歓声があがる。そして俺は外に出て、バレー部のテントへ向かった。そこにもまた男達の凄い列。その先頭にはテーブルを一つ挟み、挑戦者の腕をへし折るんじゃないかという勢いで、次々と腕相撲で勝利を収めていく岩ちゃんの姿があった。
「ちょっと岩ちゃん!あれ、どういこと!?莉緒ちゃんにあんな格好させて、岩ちゃん正気なの!?」
「ダメだって突っぱねたに決まってんだろうが!」
俺と会話をしなからも次々と挑戦者を倒していく勇ましい岩ちゃん。
「目立つ格好はダメだって言ったし、クラスの奴らも説得したのに、急に莉緒がやる気だして、着るってきかなくなって。莉緒がOK出した途端に諦めてたクラス連中もやる気出して全然話きかねーし。」
そのやる気スイッチを押した原因は多分俺。莉緒ちゃんの闘争心に火をつけてしまったんだろう。莉緒ちゃんも負けず嫌いだし、勝負事好きだしね。
「てか岩ちゃん今何人抜き?」
「わかんね。次から次に来るし、一々数えてられるかよ。」
岩ちゃんが二年連続チャンピオンだと知りながら並ぶ青城の生徒達。噂を聞きつけてやってきたであろう他校の生徒。流石の岩ちゃんもこの数相手じゃ、疲労もたまってそのうち負けちゃうんじゃないか少し心配になった。だって、最後尾と書かれたプラカードを持った矢巾が、あんなに遠くに見える。
「岩ちゃん、負けないよね?」
「誰が負けるかよ!莉緒は誰にも渡さねーよ。」
サラリとかっこいい台詞を吐き捨てる岩ちゃん。とりあえず、ここはもう岩ちゃんを信じるしかないので、岩ちゃんを信じて自分の教室へと戻った。