第9章 彼女と最後の青城祭
クラスメイトの計らいで、俺はまあ割と部活を優先する事が出来たが、レギュラーじゃない部員達とマネージャーの莉緒ちゃんは青城祭の準備で忙しそうだった。
そして、あっという間に青城祭当日。外部の人も入場自由で、二日間にわたって行われる青城は近所でも評判で、毎年、俺見たさにやってくる他校の女子が多く、クラスのイケメン喫茶も大賑わい。午後はバレー部で握手会がある為、午前中になんとか売上を上げておきたい。
「なあ、見た?」
「見た!超ヤバい!噂以上!」
そんな会話が、女の子達を見送った後に廊下から聞こえてきた。彼らが出てきたであろう、隣のクラスの方を見ると、そこには物凄い行列。並んでるのは男ばかり。その異様な光景にギョッとして、まさかと思い、隣のクラスを覗くと、そこには男子達に笑顔を振りまく、メイド服を着た莉緒ちゃんの姿。
「ちょっと莉緒ちゃん何してんの!」
五組はスムージーをやるって聞いてたけど、メイド服着るとか聞いてないし。可愛いフリルのついた、メイド服。そのメイド服の胸元は開かれており、スタイルのいい莉緒ちゃんはそれを着こなしていて、男共の視線はその莉緒ちゃんの胸元と、短いスカート丈に注がれていた。
「及川もスムージー欲しいならちゃんと並んで。」
五組の女の子達も莉緒ちゃんと同じメイド服を着てるのに、莉緒ちゃんだけなんだか特別な服でも着てるかのようにキラキラ輝いていた。慌てて自分のクラスに戻り、エナメルバックからジャージを取り出し再び五組へ戻った。
「そんな服、ダメだよ!ジャージ!ジャージ着て!」
「なんで?」
「ダメなもんはダメなの!いいからこれ着て!」
莉緒ちゃんに強引にジャージを被せると、並んでいる男達からの不満の声があがった。
「今年は五組が焼肉いただきますから。」
そう言ってあの時と同じ悪戯な笑みを浮かべた莉緒ちゃん。渡したジャージは突き返されて、また笑顔で接客。そんな格好で笑顔振りまいたら、馬鹿な男達が勘違いを起こす。てか、岩ちゃんはこれ、許した訳?教室を見渡すけど、岩ちゃんの姿はない。代わりに、腕を組んで教室の隅でいつも通り機嫌の悪そうな狂犬ちゃんの姿があった。