第9章 彼女と最後の青城祭
「あ、岩泉君。岩泉君はミスターコン出ないの?」
「は?なんで俺?」
「及川の三連覇を阻止できるのは岩泉君だけだと思うんだよね。」
「少なくとも三年女子はほぼ全員岩泉に入れるわな。」
そう言って岩ちゃんを取り囲むクラスメイト。そんなに褒めたら岩ちゃんが実は自分がハイスペックだって気付いちゃうじゃん!
「まあ、クソ川が三連覇すんのは腹立つな。」
「でしょ!だから岩泉君出場しなよ!」
「てか、岩泉。橋口さんはミスコンでんの?」
「ああ。」
「莉緒ちゃん嫌がりそうなのに。」
「生徒会と実行委員に追い回されて心折れたって。」
まあ、あんだけ人の目を惹く莉緒ちゃんだから、生徒会や実行委員からしたら手放したくない逸材だよね。
「じゃあ尚更岩泉君出なよ。青城祭の最後ミスター青城とミス青城は後夜祭もあるし。岩泉君と橋口さん、美男「美女と野獣だね。」」
美男美女でお似合い。
そんな言葉、岩ちゃんに聞かせたくなくて、クラスメイトの言葉を遮った。
「誰が野獣だって?」
痛いと言う俺の悲鳴を無視し、岩ちゃんの卍固めが決まる。それを見てもっとやれ、と煽るクラスメイト。岩ちゃん本当ゴリラ。多分加減はしてくれてるんだろうけど、それでも痛い。
「てか岩ちゃん!なんか用事あって来たんじゃないの!?」
そういえば、と用を思い出したよで、やっと卍固めから解放された。月曜日で今日は部活もオフ。
「部室の鍵よこせ。」
「え、何?部活するの?」
「着替え取りに行くだけだ。」
そう言った岩ちゃんに部室の鍵を渡した。