第9章 彼女と最後の青城祭
「もうさ、及川と握手一回五百円。チェキで一枚記念写真付きとかで良くね?それなら練習する必要もねーし、楽じゃね?」
岩ちゃんのその発言にマッキーとまっつんが頷いた。
「いやいや何それ、そんな俺を商品みたいに扱って!」
「こんな時位しか役に立たねーんだから、大人しく部費の足しになれクソ川!」
「それならさ、今年は莉緒ちゃんもいるんだし、莉緒ちゃんと握手と写真で五百円にすればいいじゃん!及川さんだけそんな扱い嫌だからね!」
「莉緒を商品みたく扱うんじゃねえボケ!」
「そうだそうだ!」
「え、俺は良くて莉緒ちゃんはダメなんて差別だよ!」
いや、まあ、でも実際の所、莉緒ちゃんがバレー部以外の男子達と隣に並んで写真を撮るなんて、嫌だけど。
「まあ、及川のは決定としてさ、及川だけじゃ客は女子だけじゃん。もっと収益見込めそうなのないの?」
「いや、マッキー、まだ決定じゃないからね。及川さん許可した覚えないからね。」
そんな俺を無視し、うーんと考え込む三人。そして、まっつんがぽんと手を叩いて、こう言った。
「岩泉と腕相撲一回五百円。」
「岩ちゃんがゴリラなのは皆知ってるから誰もやりたがら、」
言い終わる前に岩ちゃんにお尻を思いっきり蹴られた。
岩ちゃんは二年連続腕相撲のチャンピオンだし、勝てる見込みのない勝負に五百円なんて払う訳ない。まあ、岩ちゃんが負けるとは思わないけど、仮に負けたとしたらその景品はどうするのか。
「景品は一時間莉緒ちゃんと青城祭デートできる権利。」
「「はあ!?」」
岩ちゃんと台詞が被った。
「だから莉緒をそんな風に使うのは反対だって言ってんだろ。俺が負けた時は女装した及川とデートで充分だろ。」
「いやいや、何が嬉しくて男共と女装してデートしなくちゃいけないんだよ!絶対嫌だからね!」
「まあ、聞けって。岩泉、お前腕相撲誰かに負けるつもりな訳?」
「負けねーよ!」
「じゃあいいじゃん。岩泉が負けないなら莉緒ちゃんは誰ともデートしなくていいんだし。」
「だから、莉緒を景品扱いするのが、嫌だって言ってんだろうが!」
「そう言って、本当は勝ち続ける自信がないだけなんじゃない?」