第8章 特別な存在(岩泉視点)
身支度を済ませ、莉緒と駅に向かった。全員が揃い、電車に乗り大学へと向かう。
練習中、莉緒の傍にいれないことが悔しくもあり、不安でもあったが、後輩達が、
「岩泉さんが試合してる間は俺らに任せてください!」
そう言ってくれたので、それに甘えた。後輩達は上手く四宮を莉緒から遠ざけてくれていた。
練習も一段落し、休憩中、向こうの主将に頼まれ莉緒と金田一と共に食堂へ向かった。食堂のおばちゃん達から差し入れを受け取り、莉緒は荷物を抱え先に食堂を出た。俺も差し入れを受け取り外へ出ようとすると、莉緒の悲鳴が聞こえ、慌てて外に出ると蹲る莉緒と四宮の姿。莉緒に駆け寄ると莉緒は震えていた。
こんなに近くにいるのに、俺はまた莉緒を守れていない
それが悔しかったのと、四宮が憎らしくてたまらなかっとたのと、その二つの感情が一気に押し寄せてきた。四宮を怒鳴りつけると莉緒が違うと言って、仲裁に入る。そして、鳩宮さんも食堂から出てきた。鳩宮さんに頭を下げた莉緒を支え、その場を後にした。
それからの練習は、四宮は一切莉緒に関わらなかった。
そして練習も終わり挨拶を済ませ駅へと向かった。駅に到着する頃には莉緒も安心したようだった。電車が発車しようという時に、向こうで花巻と松川と喋っていた及川がこっちにやってきた。
「岩ちゃん、莉緒ちゃん借りるね。」
そう言って及川は莉緒の手を取り電車を降りた。それを慌てて追いかけようとするが、何故か花巻と松川に押さえ込まれ、振りほどこうとしているうちに電車の扉が閉まった。そして、電車はゆっくりと走り出した。
「…ふざけんな!」
花巻と松川を振りほどき、電車の扉を殴る。それに後輩達は驚いていたが、そんな事はどうでもいい。
暫くすると次の駅に到着し、俺はその駅で降りて、全力で走った。