第8章 特別な存在(岩泉視点)
そして、三年生になった。
「莉緒ちゃん青城の編入試験受かるといいわね。」
「は?」
「え?アンタ聞いてないの?莉緒ちゃんまたこっちに引っ越してくるのよ。」
は?そんなの聞いてねーし。
こっちに戻って来る事を、莉緒は俺に黙っていた。毎日連絡取ってるのに、何で莉緒は言わなかったんだよ。莉緒が俺に引っ越しの件を話さなかったことにイラついた。そして、その日電話をかけ、その事について話すと、莉緒は言葉を詰まらせながら、何故俺に引っ越しの件を黙っていたか理由を話した。
「何があったって俺は莉緒を嫌いにはならねーし、俺が絶対に守るから、だから迷わず青葉城西に来い!」
子供の俺に唯一出来る事。莉緒がこっちに戻って来るなら、今度こそ、莉緒を守りたい。
俺の言葉に決心を固めた莉緒は、青城の編入試験を合格。そして、莉緒は運良く俺と同じクラスに編入してきた。
そして、俺は莉緒に男子バレー部のマネージャーを勧めた。莉緒が選手としてコートに立ちたいって事は分かってた。でも、俺は莉緒と同じコートで、同じチームとして一緒にバレーがしたかった。でも、それは性別っていう大きな壁があって、それはどうしても叶わない願いだった。それなら、莉緒が、選手としてではなく、コートの外からマネージャーとして、同じチームの一員として男子バレー部にいてくれたら、そう思って、マネージャーになって欲しいと頼んだ。俺の利己的な考えを莉緒に押し付けるのは気が引けたが、俺は莉緒に莉緒がチームの一員として認められる環境でバレーに関わって欲しかった。ここなら、それが出来ると思ったから。
そして、莉緒は男子バレー部のマネージャーになった。部員達も莉緒を気に入ってくれ、莉緒自身も楽しそうだった。楽しそうに笑う莉緒を見る事が出来、それに安心していた。