第8章 特別な存在(岩泉視点)
莉緒の家に戻ると、莉緒は言葉に詰まりながらも、おじさんとおばさんに今まであった事を全て話した。俺はそんな莉緒の手を握ってやる事しか出来なかった。
話しが一段落ついた頃には十一時をまわっていて、もう宮城に帰る電車もない為、そのまま莉緒の家に泊まる事になった。おばさんが客間に布団を敷いてくれたが、莉緒が俺から離れたくないと言って、俺は莉緒の部屋に。莉緒は俺の手を握ったまま泣き疲れて寝てしまった。こんなに小さな体で、全部一人で抱え込んでた。俺がもっと頼り甲斐のある男だったら、莉緒はもっと早い段階で俺を頼ってくれていたかもしれない。莉緒と毎日のように連絡を取ってたのに俺は気付いてやれなかった。
翌日、おじさんとおばさんは学校へ向かった。こんな状態の莉緒を放っておく訳にもいかず、俺は莉緒の傍にいた。涙を流す莉緒を安心させる為、強く莉緒を抱き締めた。
「一君、私、バレーが好き。こんなになってもバレーを続けたいなんておかしいよね。ダメだよね。」
「絶対にバレー諦めんなよ。莉緒が思いっきりバレー出来るチームはある。お前を必要とし、お前が必要とするチームが絶対ある。
もしまた辛い事があった時は絶対俺に言え。どんなに遠くたって、駆けつける。だから、今回みたいに返事寄越さないのも、黙っとくのも無しな。
一緒にコートに立つ事はできねーけど、俺は何があったって、莉緒の味方だから。」
莉緒はまた泣いた。泣いて俺にしがみつく莉緒は小さくて、壊れてしまいそうだった。絶対に俺が守ってやるんだ、そう心に誓った。もう二度莉緒を傷付けさせたりはしない。