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【HQ】Egoist

第8章 特別な存在(岩泉視点)


 莉緒の通う学校に着き、門が閉まっていた為、それを飛び越えようとすると、警備員に捕まった。中に入れて欲しいと頼むも、入れれないの一点張りで話にならない。ぶん殴って、その隙に入ろうかと思った時、警備員に美鈴と呼ばれる女子が話し掛けてきた。美鈴という名前を聞いてピンときた。こいつ、バレー部、莉緒と仲のいい奴。事情を説明すると、ソイツはそれなら自分が中を見てくると言った。それに俺は分かったと頷いた。
 そして、警備員が門を開けたのを確認し、美鈴の手に持つ鍵を奪って校内に入った。それを二人が追い掛けてくる。ここに来たのは初めてだし、体育館の場所なんか知らない筈なのに、何故か迷うことなく体育館に辿りついた。そして、体育館の鍵を開け、中に入った。体育館の中は室内だというのに随分寒かった。そして、体育館の中に莉緒の姿はなかった。でも、不思議と俺は莉緒が、そこにいるのが分かった。体育館の倉庫に駆け寄り、鍵を開けると、そこにはやっぱり莉緒がいた。


「莉緒!」
「…なんで、一君が、」


 莉緒の声は震えていた。大丈夫だと言って抱き締めた莉緒の体は冷たくて、氷のようだった。そして、莉緒は俺の中で泣いた。冷たくなった莉緒の体にコートを掛け、莉緒をおぶった。
 倉庫を出ると、莉緒の姿を見た警備員が驚いていた。話さないといけないことは色々ある。でも、俺はここから一刻も早く莉緒を離したくて、警備員を無視して外へ出た。

 帰り道、莉緒は俺の背中で沢山泣いた。春高予選での事、イジメの事、それを泣きながら話してくれた。それを俺はただ、黙って聞いていた。莉緒からのSOSのサインはもっと前からあったのに、早く気付いてやれなかった自分に苛立った。


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