第8章 特別な存在(岩泉視点)
高校一年の時、莉緒が岩手に引っ越してきた。隣の県で、距離も割と近かった事もあり、久しぶりに母ちゃん達も一緒だが、莉緒と会うことになった。
久しぶりに会った莉緒は当たり前だけど、小学生の頃より背も伸びてたし、女らしくなってた。昔はそうでもなかったけど、今の莉緒はおばさんそっくりだった。
そして、お互い高校生になり、携帯を購入したことから、連絡手段は手紙からLINEへと移動した。手紙よりも連絡が手軽につく事から、前より頻繁に連絡を取るようになった。お互い部活が休みの日は一緒にバレーをする事もあった。莉緒は女だけど、すげーバレーが上手かった。だから一緒にバレーをするのは楽しかった。
毎日のように連絡を取り合っていたのに、秋頃から徐々に莉緒からの返信が遅くなり、冬になる頃には返信が来なくなった。一年で唯一のレギュラーだって言ってたし、練習が忙しいのかもしれない、そう思った。でも、何故か不安は大きくなる一方だった。
部活が何時もより早く終わった為、その日はそのまま電車に乗って岩手に向かった。
岩手は雪が降っていて、かなり寒かった。雪もかなり積もっていて、帰りの電車がちゃんと動くか不安もあったが、莉緒の家へと向かった。
莉緒の家のインターホンを鳴らすと、勢いよくドアが開いた。
「こんばんは。」
「一君、一人?」
「そうっすけど。」
「莉緒がまだ帰ってこないの。今日は部活も休みになったって言うし、携帯鳴らしても出ないし。」
おばさんの声は酷く震えていた。
「ど、どうしよう、莉緒に何かあったんじゃ、」
「おばさんは家にいて!俺、ここら辺探してくるから!」
荷物をおばさんに預け、外に飛び出した。
莉緒が何処にいるかなんて分からない。けど、俺はまっすぐ、莉緒の学校の方へと走った。