第8章 特別な存在(岩泉視点)
「なんで母ちゃんと莉緒の母ちゃん仲いいの?」
どう考えてもタイプの合わなさそうな二人。子供の俺から見てもそう思えた。それに対して母はこう答えた。
「なんかさ、ほって置けないのよね。歳がだいぶ下なのもあるかもしれないけど、なんつーか危なっかしいっていうか。女の子がそのまま大人になったみたいな。それに、陽子ちゃん、陽子ちゃんって嬉しそうに私の名前を呼ぶ姿は可愛いし。守ってあげたくなる、みたいな?」
その時は母ちゃんの言葉の意味が全く理解出来なかった。
その言葉の意味を理解出来たのは、莉緒の転校が決まった、三月の事だった。
転校が決まってから元気のない莉緒は、一緒に遊んでても心ここにあらずって感じだった。元気出せよと声を掛けると、莉緒は突然泣き出した。
「一君と離れ離れになるの嫌だよ。」
そう言って泣きじゃくる莉緒の姿に、母ちゃんが言っていた、『守ってあげたくなる』って言葉が重なった。
「泣くな!離れてても友達だろ!俺、手紙書くから!そしたら離れててもお互いの事ちゃんと分かるだろ!」
その約束は、小学校を卒業し、中学に入ってからも続いた。
中学に入ってからは部活やらで何かと忙しかったけど、月に一回は莉緒に手紙を書いた。手紙の内容は殆どがバレーの事だった。