第8章 特別な存在(岩泉視点)
莉緒は俺にとって特別な存在だった。
莉緒と初めて会ったのは小四の時。転入生としてやってきた。クラスは一緒だけど、別に話す訳でもなく、ただのクラスメイトで、特別意識したりすることはなかった。
ある日、学校が終わって家に帰ると、知らない女の人がいた。その女の人の隣にいたのが莉緒だった。とりあえず、挨拶をと思って挨拶だけして、及川とバレーをする約束をしていたからその日はそのまま家を出た。
後から聞いた話によると、莉緒の隣にいたお姉さんは莉緒の母ちゃんだったらしい。こないだの授業参観の時に仲良くなったらしく、遊びに来てたらしい。母ちゃんはどちらかというとサバサバした性格。でも、莉緒の母ちゃんは大人しそうで、なんつーか、ふわふわしててる。気が合いそうでもないし、どうして仲良くなったか分からなかった。
それから、莉緒の母ちゃんは莉緒を連れてよく遊びに来るようになった。そして、母ちゃんも莉緒の家によく遊びに行っていた。それにたまについて行く事もあって、莉緒と仲良くなった。
及川と約束をしてる日は、三人でバレーをする事もあった。まあ、割と楽しかった。
莉緒は俺と二人でいる時はよく喋るし、よく笑う。でも、クラスにいる時の莉緒は、皆との間に壁を作ってるように思えた。それについて何でかと尋ねると、
「だって、すぐにまたお引越しになっちゃうから。仲のいい友達が出来ると離れるのが悲しくなるから。」
そう答えた。
「離れてても友達だろ?」
俺の問い掛けに、莉緒は、歯切れの悪い返事をした。