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【HQ】Egoist

第6章 許されない過去(四宮視点)


「鳩宮さんは?」


 及川との話を終え、チームの元へ戻ると、鳩宮さんの姿がなかった。


「鳩宮さんなら向こうのマネージャーと部員何人か連れて食堂行ったけど。」


 それを聞いて私は慌て食堂へ向かった。少しでも早く莉緒と話がしたくて、近道をしようと校舎の中を突っ切った。校舎を抜けると、食堂前の階段を丁度莉緒が降りようとしてる所だった。


「莉緒!」


 莉緒の名前を呼び、莉緒の肩に手を置いた。その瞬間、莉緒は悲鳴をあげ、その場に蹲った。
 その光景が一年前のあの光景と重なった。


「莉緒ちゃん!?」


 莉緒の悲鳴を聞きつけ、及川と岩泉が走ってきた。そして岩泉は震える莉緒に駆け寄った。そして、鬼のような剣幕で私に怒りを向ける岩泉。違う、今回は、今回は私は何もしてない。でも、岩泉は信じない。私は過去に莉緒を階段から突き落とした。


「一君、違うの。急に声をかけられてビックリしちゃっただけだから。本当になんにもないから。」


 そう言って莉緒は私と岩泉の間に割って入った莉緒は酷く震えていた。


「どうした?何かあったか?」


 騒ぎを聞きつけた鳩宮さんが食堂から遅れて出てきた。


「すみません、急に声を掛けられてビックリしてしまいました。何でもありません。お騒がせしました。」


 そう言って鳩宮さんに頭を下げた莉緒は岩泉に支えられながら体育館の方へと戻っていった。

 莉緒に謝りたい。

 ただ、それだけなのに、声を掛けるのも許されないくらい、莉緒は私という存在に怯えていた。自分の存在が莉緒の中では、ただの恐怖の対象。莉緒が望んでいるのは、私が謝罪する事じゃない。私と関わらない事だ。私の自己満足で、私はまた莉緒を傷付けようとしてる。


「及川やっぱりいいや。もう、このままでいい。」


 私が莉緒にしてあげられる事が莉緒に関わらない事なら、莉緒の望む事をしよう。もう、これ以上莉緒を傷付けたくない。



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