第6章 許されない過去(四宮視点)
午後の練習が始まり、暫くすると鳩宮さんから「なんかよく分かんないけど、練習終わったら近くのファミレスって伝えてくれって。」と言われた。練習が終わるのが待ち遠しくてたまらなかった。
何時もだったら短いとさえ感じる練習時間だが、今日はやけに長く感じた。
挨拶を済ませ、莉緒と一緒にファミレスに行こうと思ったけど、青葉城西の皆はネットを片付けたりモップをかけたりと忙しそうだった。約束はしてるんだし、先にファミレスに行って莉緒を待つことにした。
ファミレスに入って席につき、暫くすると、ナンパされた。ぺちゃくちゃとどうでもいい事を話し続ける彼等。それを無視して私は携帯をいじるが、なかなか諦めない。あまりのしつこさに、イライラがピークに達した。
「お待たせ。」
そう声を掛けてきたのは青葉城西の主将及川。彼の姿を見て男連れかよと舌打ちをしてナンパ男達は去っていった。
「莉緒は?」
「岩ちゃんと帰りましたけど。」
「は?莉緒がいないんじゃ話になんない。帰る。」
席を立とうとすると及川に手を掴まれた。掴まれた手を振りほどこうとするも、力が強く、振り解けない。
「莉緒ちゃんから色々話聞きましたよ。昔、随分と莉緒ちゃんの事可愛がってくれてたみたいですね。」
莉緒はあんまり自分の事、特に悲しい事とか辛かった事とかは話さないのに、コイツに喋ったんだ。なんだか少し裏切られたような気分になった。
「莉緒が話したんだ。アンタ何?莉緒の彼氏…な訳ないよね。どう考えたって、アンタ莉緒の好みじゃないし。どっちかっていうと、莉緒の嫌いなタイプそうだし。」
「主将として、部員の事はちゃんと把握しておきたいので。練習に差し支えるようなら尚更。」
「莉緒から話を聞いたってことは、私が莉緒の事イジメてたって知ってんでしょ?」
「ええ、まあ。」
「莉緒なんて言ってた?どうせ、泣いて騒いで、アンタ達の同情でもひいたんでしょ?」
「莉緒ちゃんはそんな事しません。それは、あなたの方がよくご存知なんじゃないですか?」
莉緒の事ならなんでも知ってますと言わんばかりの及川の態度に腹が立った。