第6章 許されない過去(四宮視点)
練習が始まれば莉緒と二人で話すチャンスはいくらでもあるって思ってたのに、莉緒に声を掛ければ岩泉が必ず割って入ってくる。
試合が始まれば、岩泉はレギュラーらしいし、私の邪魔は出来ない。そう思ったのに、岩泉に言われたか何か知らないけど、ベンチメンバー達が莉緒を取り囲んで話しかけようにも話し掛けれない。
試合中の岩泉は、高校生にしては上手いのだろうけど、集中出来てないようで、小さなコンビミスが続いていた。
一方、鳩宮さんが言っていた凄いセッターというのは、あの主将の事だったようで、確かに、チームの中でずば抜けて上手かった。
トスを上げたかと思えば、サーブは凄い威力だし、レシーブも卒なくこなす。そして、力強いスパイク。仲間への声掛け、気配り、何処を取っても素晴らしい選手である事が分かった。
午前中の練習が終わり、お昼の時間。時間は沢山あったのに、まだまともに莉緒に声を掛けれていない。これも全部岩泉のせい。罵倒されるのも責められるのも構わない。寧ろその方が有難い。そう思っていたけど、莉緒と話す邪魔だけはして欲しくない。
「おい、四宮大丈夫か?」
「は?何がですか?」
「顔、すげー怖いぞ。」
「四宮ちゃん向こうの副主将とマネージャー知り合いなの?」
「そうですけど。」
「なんか向こうの副主将感じ悪くね?」
「岩泉の事悪く言うのはやめてください。私が前岩泉の好きな子イジメたんで嫌われてるだけなんで。だから私が何言われても口出ししないでくださいよ、先輩方。」
「じゃあさ、口出ししないからあのマネージャーの子紹介してよ。」
「あ、俺も俺も!」
「あの子超かわいい!」
そう言って俺も俺もとほぼ全員が手を上げた。
「莉緒に声掛けたら腕へし折りますよ。」
その一言に先輩達は黙った。
「私莉緒の所行ってきます。」
「四宮、笑顔な、笑顔。そんな顔で話し掛けたら相手もビビるから。」
「そんなの分かってます。」