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【HQ】Egoist

第6章 許されない過去(四宮視点)


 雪は止むことなく降り続いた。降り積もる雪に、下がっていく気温。時間が経つにつれ、体育館の倉庫に閉じ込めた莉緒の事が気になった。室内だし、多少寒いだろうけど、それで死んだりはしないし。でも、親とかが心配して探すんじゃないだろうか。閉じ込めた時は、何とも思わなかったのに、不安は徐々に膨らんでいった。

 八時過ぎに家の電話が鳴り、それを取ると莉緒のお母さんからだった。莉緒が家にお邪魔してないかという電話だった。私は莉緒は来てませんとだけ答えた。
 おばさんとの電話が終わり、部屋に戻ったが、心配そうなおばさんの声がやけに耳に残った。
 何度か莉緒の家に遊びに行った事もあり、おばさんとは面識もあった。初めておばさんに会った時は、莉緒のお姉さんだと思った。お母さんだと聞いて凄く驚いた。若くて、大人の女性に可愛いという表現は少しおかしいかもしれないけど、とても可愛らしい人だった。
 おばさんは、小中高一貫の女子校で育ち、所謂お嬢様ってやつで、高校生の時に両親が事故で亡くなり身寄りがないおばさんの事を引き取ったのが莉緒のお父さんで、高校を卒業しすぐに結婚しそのまま専業主婦。世間知らずで、あの容姿。外に出れば莉緒と同じくしょっちゅう声をかけられるし、方向音痴でおっとりした性格のおばさんはなんだか危なっかしくて、目の離せない人だった。
 おばさんの事を考えると、自分のした事にほんの少しの罪悪感が芽生えた。莉緒の事は嫌いだけど、おばさんの事が嫌いになった訳じゃない。
 この事が公になるのも面倒だし、と言い訳を付けて、私は外へと出た。



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