第1章 最低最悪な彼女
莉緒ちゃんは、思ってた以上によく働いてくれて、マネージャーがいなくて自分達でやってたことを全て莉緒ちゃんがやってくれて、正直かなり助かってる。うちは、人数も多いし、結構大変だと思うけど、嫌な顔せず、テキパキと仕事をこなす。そして何より、莉緒ちゃんがいることで、部員の士気が高まってる。
あと、莉緒ちゃんがマネージャーになって分かった事が一つ。莉緒ちゃんはクールな性格な訳じゃなくて、俺にだけ冷たい。俺以外には笑顔なのに、俺にだけ無表情か蔑んだような表情。それを見て皆笑うけど、俺にだけそんな態度って酷くない!?可愛いけど、全然可愛げがないよ!最初は照れてるだけかな?って思ってたけど、これは完全に嫌われてる。
「ねえ、莉緒ちゃん。俺、莉緒ちゃんに何かした?」
ドリンクを作ってる莉緒ちゃんにそう声を掛けると、声をかけただけなのに、明らかに嫌そうな顔。
「俺にもたまには笑顔向けてよー。ね?莉緒ちゃんの可愛い笑顔見たら、俺やる気出るのになー!」
そう言うと、莉緒ちゃんはボトルを置いて、俺の方を見て笑った。初めて自分に向けられたその笑顔に思わずドキっとした。
「ほんとウザい。他の部員達は真面目に練習やってるのに、主将のアンタが一々マネージャーに構ってどうすんの?そんなにマネージャー業が気になるなら主将やめてマネージャーにでもなれば?
そもそも、アンタにとってのバレーは遊びの延長なのかしら?」
顔は笑顔だけど、言ってることは酷い。
「これで満足?さっさと練習に戻って。」
「岩ちゃんがいたからマネージャーやりはじめたくせに。やましい気持ちでマネージャーやってんじゃないの?マネージャーになれば部活中も岩ちゃんと一緒にいれるしね。」
バレーを遊びの延長と言われ思わず、言い返した言葉。一々癇に障る事を言ってくる莉緒ちゃんに思わず本音が漏れた。
鋭い瞳で俺を睨みつける莉緒ちゃん。莉緒ちゃんの手が俺の胸元を掴んだ。そして、思いっきり莉緒ちゃんに引き寄せられ、あと少しで唇が触れてしまうんじゃないかってくらいの距離。