第6章 許されない過去(四宮視点)
それまでイジメを傍観していたが、その日から私は莉緒に対して、よりきつく当たるようになった。
莉緒が部活に来ると、莉緒の目の前で莉緒の私物をゴミ箱に捨て、ゴミ箱に捨てられたウェアを着る莉緒を臭いと言って笑った。
監督がいない時には、レシーブの練習と言って五人同時に莉緒目掛けてスパイクを打ち、ボールをぶつけられる莉緒を見て笑った。痣だらけになる莉緒を見てスカッとした。
部活のLINEグループを莉緒を退会させ、連絡事項は一切莉緒に伝えなかった。個人LINEも皆にブロックするように言った。
外で出待ちをしてる男子高校生達に、今日は莉緒と好きなだけ遊んで来ていいよと言って、莉緒を出待ちしてる集団に差し出した。その後、お持ち帰りされたか、自分で何とかしたか、そんなのはどっちでも良かったけど、莉緒が助けを求めるように、悲しそうな顔で私を見る姿は気分が良かった。
それでも莉緒は毎日休まずに部活へ来た。
初めは悲しそうな表情をしたり、莉緒のショックを受けた顔を見るとスカッとしてたのに、段々と慣れてきたのか、最近では表情も崩さない。そんな莉緒に対し苛立ちは増し、私も含め皆からのイジメはエスカレートしていった。
普段は部活内でしか表立った事はしていなかったけど、校舎内で莉緒を見かけ、私は階段を降りる莉緒の背中を押した。
私の苦しみを理解してくれない無神経な莉緒に私の心は酷く冷たく、残酷になっていた。背中を押せば莉緒は階段を踏み外した。そのまま落ちる。そう思ったのに、莉緒は咄嗟に手すりを掴み、倒れなかった。莉緒は後ろを振り返り、私の顔を見て、酷くショックを受けたような顔だった。久しぶりに見た莉緒のその顔に、私はゾクリとした。莉緒のショックを受けた顔や泣きそうな顔を見ると、楽しいと感じる自分がいた。
「そのまま落ちればよかったのに。」
そう言って、私は莉緒の前を去った。