第6章 許されない過去(四宮視点)
試合の後、誰一人として私を責める人はいなかった。
本当は、ボールに届いた。スパイクを打つことだって出来た。
でも、あの完璧なトスを打って、セッターとしての自分を、今までのバレーを否定するのが怖かった。
試合が終わり、学校へと戻りミーティング。
ミーティングが終わり、莉緒は着替え終わると珍しくそのまま帰って行った。部室には二年生だけが残っていて、莉緒がいなくなった事で気が緩み、私はついその場で泣き出してしまった。心配して声を掛けてくれる皆の優しさが温かくて、私は皆に謝り乍沢山泣いた。そして私は、溜め込んでいた不満を口にした。
ポジションを後輩に、しかも違うポジションの奴に奪われる苦しみ。そして、違うポジションなのにも関わらず正セッターの私より優れていた莉緒。悔しくて、悲しくて、苦しくて、限界なんかとっくに越えていた。
今まで誰にも弱音なんか吐かなかったのに、こないだは彼氏の前で泣いちゃうし、今度は皆の前で泣いちゃうし、もう私の心はずっと悲鳴を上げていたのに、それに気付かないふりをしていた。私の愚痴を聞いてくれる皆は優しくて、なんだか少しほっとした。
私の話が終わると、
「だから、私はアイツをレギュラーにするの反対だったのよ。」
「ちょっとバレーが上手くて可愛いから調子に乗ってるよね。」
今まで私が庇ってきた莉緒。それを私がやめれば、今まで皆が溜め込んできた莉緒に対する不満が溢れ出る。そんなこと、分かってた。だから、皆に言った。
このチームに必要なのは莉緒じゃなくて、私だって、言って欲しくて。
「美鈴、私達は美鈴の味方だからね!」
そう言ってくれる仲間達の言葉に心底安心した。