第6章 許されない過去(四宮視点)
その日部活が終わってから監督の家へ行った。付き合ってから初めて喧嘩をした。
春高に行く為には勝たなきゃいけない。勝ちに行く選択として私はセッターから外された。それを頭では理解していたけど、心はそれを受け止められていなかった。彼が悪い訳じゃないのに、監督は何度も謝ってくれた。それがまた苦しくて、私は監督の前で大きな声を上げて泣いた。そんな私を監督は優しく抱きしめてくれた。泣いて叫んで、抱えてたものをぶちまけると少しスッキリしたような気もしたけど、心の奥底ではセッターというポジションに執着していた。
それから部活は春高代表決定戦でのポジションでの練習になった。莉緒がセッターとしての経験があったと話には聞いていたけど、実際莉緒がトスを上げるのを見るのは初めてだった。莉緒のトスは正確で、一人ひとりのタイミングや、好みの高さ、セッターとして申し分ない実力だった。莉緒のトスは、五年間ずっとセッターとしてやってきた私と同等、いや、それ以上だった。
可愛がってる後輩の頼もしい姿に喜びを感じながらも、莉緒に対する嫉妬心と劣等感がどんどん膨らんでいった。それを誤魔化す為に、今まで以上にバレーに打ち込んだ。