第6章 許されない過去(四宮視点)
「春高代表決定戦、セッターは橋口。
四宮はウイングスパイカーとして出場してもらう。」
春高代表決定戦を来週に控え、スタメン発表の時、監督にそう言われた。ずっとセッターとしてバレーをしてきたのに、初めてセッターから外された。試合には出れるけど、私はセッターじゃない。
「どうして私がセッターなんですか!?私達のチームのセッターは美鈴さんしかいません!」
そう声を荒らげる莉緒に監督は、
「本気で言ってるのか?お前が一番分かっているだろう?」
莉緒に向けて掛けられた言葉は、私に向けられたものでもあった。
自分でも分かっていた。以前のような正確なトス、素早い動きが出来なくなっていた事。それは、今まで一番長く一緒に練習をしてきた莉緒も気付いていたはず。だけど、私達はそれに気付かないふりをしていた。
莉緒の表情は暗く、莉緒を安心させたくて、「私が代わりにバンバン点取るから、安心して。」そう言って莉緒の肩をたたき、笑ってみせた。