第6章 許されない過去(四宮視点)
春高一次予選が始まり、一回戦、二回戦と順調に勝ち進んでいった。
三回戦、相手チームに男子顔負けの強力なスパイクを打つ、スパイカーがいた。身長も高く、ガタイも良く、ブロックしても何度もブロックを跳ね除け、打ち抜かれた。これで一年生というのだから恐ろしい。こっちのスパイクも何度も彼女に止められた。彼女のスパイクをブロックする度に手がズキズキと痛む。
そして、彼女の強力なスパイクにどシャットが決まったと同時に指に激痛が走った。その痛みに耐えられず、私はその場にしゃがみ込んだ。痛みのある右手を見ると、指が不自然な方向に曲がっていた。心配し声を掛けてくれるチームメイト。チームメイトに心配をかけないよう笑ってみせるが、上手く笑えてるのかも分からない。
「ごめん莉緒、後をお願い。」
私は医務室に行く為、メンバーチェンジした。控えのセッターは一年生。バレー経験があるといえど、殆ど皆と合わせていない。私がコートに早く戻らないと、多分ここで負けてしまう。そう思う気持ちに比例するように指先の痛みも増していく。
医務室に行くと、恐らく骨が折れているだろうと言われ、近くの整形外科へ行くことになった。悔しくて、泣きたくてたまらない気持ちを抑え、病院へと向かった。
病院でレントゲンを撮ってもらったが、やはり骨折していて、全治二ヶ月と診断された。指を固定してもらい、診察室を出た。試合はどうなっただろう。
「美鈴さん!勝ちました!春高県代表決定戦、出場決まりました!」
顔を上げると、そう言って笑顔を浮かべる莉緒の姿。負けると思いコートを出たのに、皆は勝利を収めた。嬉しくて、何度も何度も莉緒の頭を撫で褒めた。
全治二ヶ月なら、春高代表決定戦には間に合う。それまでに完治して、また莉緒にトスを上げるんだ。