第6章 許されない過去(四宮視点)
莉緒と初めて出る公式戦。三回戦で去年の優勝校と当たり、三回戦敗退という悔しい結果に終わってしまった。
そしてインターハイを最後に三年生は引退し、私は主将になった。そして、エースナンバーである背番号4。私に取ってのエースは莉緒以外いなかった。監督も同じ意見だった。だから異例ではあるけれど一年である莉緒にエースの名を預けた。
「私にとって、エースは莉緒以外考えられない。」
そう言うと、莉緒はユニフォームを抱きしめながら泣いた。そんな莉緒が可愛くてたまらなかった。
三年生が引退したことで、以前より体育館を自由に使用出来るようになり、私と莉緒は今まで以上に練習に励んだ。部活が休みの日は殆ど莉緒と過ごした。
よく莉緒の話の中で『はじめくん』という人物が出てくる。莉緒がバレーをはじめるキッカケを作ってくれた人らしい。莉緒にバレーをはじめるキッカケをくれた事に対しては私もはじめくんに対して感謝をしているが、はじめくんの話をする莉緒は凄く嬉しそうで、私は会ったこともないはじめくんという存在に少し嫉妬していた。いくら親同士が仲がいいとはいえど、高校生にもなって、男女のそういった関係が変わりなく続くものだろうか。つい、気になって莉緒にはじめくんの事が好きなのかと聞くと、大好きですよ、と笑顔で答えた。が、私の聞いた好きと莉緒の答えた好きは意味が違う。まあ、莉緒がはじめくんに恋心を抱いてる訳ではないと知って少し安心した。でも、はじめくんはどうだろう。莉緒は本当に可愛い。女の私から見ても凄く可愛い。こんな可愛い子に懐かれれば、男なら絶対好きになってしまうだろう。なんて色々考えてみたが、県外に住んでる顔も知らないはじめくんに莉緒を好きなのかと聞く事は出来ない。考えるだけ無駄な気がして、深くその事について考えるのはやめた。
莉緒といつまでもバレーをしていたくて、自分が莉緒の一番でいたかった。ただ、それだけだった。