第3章 〈リクエスト〉竜胆の家【黒バス:青峰】
噛みつくようなキスと諦めたような眼差し。
何かを吐き出すように私を抱く彼は小さな子供のように震えていた。
中学時代から付き合っているひとつ年下の青峰。
はじめは明るく人懐っこくて、バスケが大好きなだけのガキだった。
私が高校に入ったくらいから様子がおかしくなった。
いつも不満そうに拗ねた態度で、スキンシップが過剰になった。
2学期に入ってからは極めつけだった。
「大輝、重い」
「なー、サン。ヤりたい」
「今良いとこだからだめ」
ゲームしてる最中に後ろからのしかかる大輝を振り払う。
さっきまでグラビア見てた癖に興奮したら私で済まそうとするのが許せない。
普段から甘やかしているのが原因だとは思うけれど、大輝は私に逃げにくる。
部活で嫌な事があった日やテストの前の日、家族や友達と喧嘩した日…決して口にはしないものの態度ですぐ分かる。
だから一切訊かない。
大抵私にはどうすることも出来ないような問題だから。
アドバイスなんて出来ないし、大輝もそれを求めてはいない。
ただ、私のそばで傷が広がらないように、膿まないように、ひたすら回復に徹している。
そんな大輝を出来るだけ自然体で受け入れてあげるのが、私の役割だと思っている。
だからぞんざいに扱いもするし、甘やかしもする。
それが心地良いのだろう、相変わらず大輝は私といるときはまるで幼児のように甘えてくる。
それが優越感でもあり、悩みでもある。