第8章 それ見た事か。
クライブさんにエスコートされるがままに先へ進む。
その先数メートル向こうには、初めて見るこの国の王様が、豪奢な椅子に腰を下ろしている。
文字通り王座、だなぁ。
つうか、やっぱりオッサンじゃん・・・
その脇から再び司教が前に立ち、
式典の挨拶と、この国の繁栄を祝うとか祝わないとか、
この日を待ち望んでいたとか、そう言った類の言葉が長々と続く。
いや、私は望んでないんだけど!
その間中死刑執行直前みたいな顔をしていたと思う。
出来ればそのまま時間が止まって欲しくて、じっと目を瞑る。
勿論その間、ルイ君を心の中で呼びまくったのと、それに一切の応答が無かったのは言うまでもない。
「では、銀の乙女よ。前へ」
クライブさんが再び跪くと、
先程までの騒がしさが一転、辺りが無音に包まれた。
私の心臓だけが、まるで時を刻んでいるみたいに。
硬直しきった身体の後ろから見えない何かに圧されるように、私の右足は一歩前へと歩み出る。
もしかしたらこの恥ずかしい式典の後、どうにか出来るチャンスがあるかもしれない、と自分自身に言い聞かせ、震える左足も一歩、前へ。