第6章 脱兎さん
ほとんど入れ替わりに部屋にステアが部屋へ来たが
声をかける間も無く従者に追い出されてしまった
何事も無かったかのように日は暮れ、夜が近づいて来る
何度従者にダリさんの事を尋ねただろうか。
何度濁され、その度不安に駆られただろうか。
・・・ねぇ、ずっと見てるんでしょ?
助けてよ、ルイ君。
・・・・・くっそ、シカトかよ!
もうじっとしていられない。
捕まるかもしれないけど、足掻くだけ足掻いてみよう
不可侵と一応言いつけておいた寝室に
午前のお洋服騒動の際に部屋に置かれた箪笥を運ばせ、従者を一人だけ寝室に残して後は部屋の外まで下げさせる。
訝しがる従者達。
私はひとつ咳払い。なるべく威厳のあるような声をあげる
「神のお告げがありました。この者に天啓を与えます」
なんかそれらしい事を言ってみたけど、別にお告げなんぞ無い。
「他の者は下がってえーと・・・中庭の葉を集め、そこに火を焚きなさい」
火を付けさせて・・・それからどうしよ?
芋でも焼かせるか?なんて。
葉っぱとか集めさせてたらきっと時間稼ぎになるはず。
これから自分で起こす行動にドキドキしながらそっと彼らの様子を伺うと
普段感情を表に出さないこの子たちが少し興奮しているように見える
私に選ばれた子は頬を上気させてこちらを見ている。
「では、この者以外は即座にとりかかるよう」
『神』と聞いた途端に疑いもしないで言いなりになる彼らが少し可哀想に見えた。
だけど私だって言いなりはイヤだ
従者一人だけなんてチャンス、逃がすわけにはいかない
部屋に一人取り残された従者は、尚も興奮した顔つきで私が何か言葉にするのを見つめ続けている
「では、わたくしは用意をしてから貴方にお告げをしましょう。寝室にいるので、誰も来ないように見張っていてください」
「あ・・・でも・・・」
「窓から逃げようなんて思ってませんよ。お告げをするにはこの服装では神に示しがつきません。そうでしょう?」
逃げませんよ。窓からは、ね。
心の中で舌を出しながら寝室へ向かう