第13章 I'll be there
「あーあ、結局バス停まで来たじゃんかよ…」
まーの乗ったバスが遠ざかっていくのを見ながら独りごちた。
まーが、「バス停まで見送られると、大泣きしちゃうから」と言ったもんだから、俺らは見送りは玄関までで、ということにしていた。
まーの実家は、中華料理店を営んでいる。
親父さんが仕事中に倒れて入院して、母親とまだ高校生の弟では店を開けることができなくなったと、一昨日まーが買い出しに出て直ぐに母親から電話がきたらしい。
まーは、長男だからと料理の高校へ行き、卒業してから1年くらい家業を手伝っていた。
なのに、なぜか3年前に美容専門学校に行った。
それ以上の詳しいことは聞いてない。
おそらく、翔さんも知らないだろう。
翔さんには、昨日の朝起きて直ぐにまーの親父さんのことを伝えた。
すると、あっという間に店長にもスタッフにも事情を話してくれて、帰る手配までもしてくれた。
流石、翔さん。
俺ら3人のなかで一番年上なだけある。
ただ、料理は…残念だけど。
「ただいま」
玄関扉を開けると、膝を抱えて座っている翔さんが居た。
俺を見て立ち上がると、
翔「おかえり。どうだった?」
「うん。バス停で会えたよ」
翔「そっか、良かった。松潤、お疲れさん」
そう言ってから、背中をポンポンと叩かれた。
どくんっ…
胸が高鳴ったのと同時に、触られた箇所がかああっと熱くなったように感じられた。