第12章 愛のかたまり
…ああ、もう駄目だ。
気持ち…わるっ…。
ぐにゃりと視界が歪む。
俺は吐気と眩暈で膝からカクンとその場に崩れ落ちた。
朦朧とした意識の中で、咄嗟に口元を右手で覆い隠した。
ここは電車の中。
こんなところで…っ!
吐いちゃ、ダメだ…っ!
必死に自分に言い聞かせる。
ダメだ…っ!
ダメだ…っ!
ダメ…。
もう…ダメ…。
ふと、誰かに左腕をガシッと掴まれた。
…誰?
そう思っても、確認する余裕がない。
?「おいっ?!あんた、大丈夫か?!」
目の前に顔が現れた。
ぼんやりとした視界。
靄がかかったように見えない。
…だれ?
俺の腕を掴んできた主は、俺を抱き起してくれた。
?「しっかりしろよ!おい!おい!」
しっかりできてりゃ、倒れねえってんだよ!
心の中でそんな悪態を吐いた自分に笑えてくる。
?「おい!返事しろって?!おい!」
声の主は、俺の頭を膝の上に乗せてくれた。
それから、俺に声かけをしながら、身体を横向きにして、背中を擦ってくれた。
ああ。
どこのどなたか存じませんが…。
「アリガト、アナタ、イイヒト…」
なんとか力を振り絞ってお礼を伝えた。
俺はその後、意識を失った。