第11章 僕は、便利屋。⑤
翔…小さな身体で頑張ってきたんだな…。
このまま押し倒したい気持ちをグッと堪えて、翔の隣に横たわった。
他愛もない話を暫くしていたら、翔がうつらうつらと舟を漕ぎだした。
そうだよな…。
疲れたよな…?
翔のおでこにキスを落としてから、掛け布団をかけて、そっとベッドから抜け出した。
風呂掃除でもするか?
そう思って寝室を出たら、来客を告げるチャイムの音が鳴った。
時計を見ると23時を過ぎている。
こんな時間に誰だ?
玄関の引き戸を音を鳴らさないようにゆっくりと開けた。
そこには、お隣の潤くんが立っていた。
潤くんは「夜分にすみません。翔くんにプレゼントです」と紙袋を渡してきて、何度も頭を下げて帰って行った。
居間のテーブルに紙袋を置くと、翔が目を擦りながらやって来た。
翔が『誰か来たの?』と言うから紙袋を渡して、
「潤くんが来て、翔にプレゼントだってさ」
翔が『潤くん来たの?』とキョロキョロとするから、直ぐに帰ったことを告げると、少し顔が曇った。
ほんとに、潤くんたちのこと好きだな…。
ちょっと、面白くないぞ?
紙袋の中身は手作りのチーズケーキだった。
遅い時間だから明日食べようと冷蔵庫にしまった。
翔は『明日が楽しみです』とニコニコしている。
マ・ジ・で!面白くねえっ‼
俺が不貞腐れていることがわかったのか?翔が『智さんがいちばんです!』とキスしてくれた。
いつもは照れて、唇にしてくれないのに…。
マ・ジ・で!嬉しすぎるっ‼
そそくさと居間から出て行こうとする翔を後ろから抱きしめて
「翔。誕生日おめでとう。俺と、ずっと一緒に居てください」
翔はコクコクと頷いてくれた。
ありがとう。
ありがとう。
翔のお母さん。
会ったことないけど…。
翔を、産んでくれてありがとう…。