第11章 僕は、便利屋。⑤
「翔…翔…翔!」
ガバッと起き上がってキョロキョロと周りを見渡している。
俺の姿を捉えてニコリと微笑んできた。
相変わらず、寝起きはいいな。
肩に引っ掛かっていた布団がスルリと落ちた。
「あっ⁉また…」
翔は最近、朝起きると下着一枚になっている。
しかも、体型に合ってないブカブカのトランクスを履いてる。
これが寝やすいらしい。
いつの間に脱ぐんだろ?
風邪を引きやすいから、しっかりとパジャマを着せてから寝てるのに…。
「何で脱いじゃうんだ?また風邪引くぞ?」
翔が『ごめんなさい。僕にもわかんない』と首を傾げる。
か、可愛い…。
一ヶ月前、狭いボロアパートからこの一軒家に越してきた。
隣の家と少し離れているから、薄壁を気にせずに毎日イチャつける。
まあ、翔の声は俺にしか聞こえないけど。
付き合ってもうすぐ二ヶ月。
毎日翔とイチャついてる。
翔が袖を引っ張ってきて、
『智さん。心配かけてごめんなさい。嫌いにならないで…』と泣きそうな顔して言ってくる。
「嫌いになるわけないだろ?」
そっと肩を押してベッドに縫いつける。
指を絡めて顔を近づけていく。
翔がゆっくりと目を閉じて…
―ピピピピピッ、ピピピピピッ
枕元に置いてある小さな目覚まし時計が鳴った。
止めたはずだったのに。
クソッ!スヌーズ機能め!
翔が『智さん!大変!遅刻しちゃう⁉』とスルリと俺の下から抜け出した。
「はあ~。もう…おはようのキスくらいさせろよ?」