第10章 さよなら ぼくのともだち
横山「なあ、このあと呑みに行かへん?」
「おっ、いいねえ。きみちゃんは明日は…」
そこまで言って、はたと気づいた。
今日は早く帰らないといけない日だ。
「よこ、ごめん。急に予定入ってること思い出した。また今度行こう」
横山「ええけど…。また、連絡してな」
「わかった。ごめんねー。…っと、急がなきゃな」
よこを見送ってから急いで車に乗り込み、エンジンをかける。
スマホを取り出して、電話をかけてみる。
でるかな?もう寝てるかな?
何回かのコール音のあと、小さく「はい…」と聞こえてきた。
『あ、今終わったから帰るからね』
『………』
『えっと…、聞いてる?』
『……うん』
『じゃあ、今から…』
『ひっ…ぐすっ…』
『どうしたの⁉』
『うぅ~。雅紀ぃ~』
『すぐ帰るからね。待っててね!』
『うぅ~。ぐすっ…わかったぁ~』
電話を切って、急いで車を発進させた。
泣いてた。
急がなきゃ…。
家までの道程を覚えてないほど、急いで帰った。
鍵を開ける手が覚束無い。
早くぅ、早くぅ。
自分に言い聞かせる。