第8章 若葉のころを過ぎても
【S】
目を覚ましたら、見慣れた天井が見えた。
ああ、大野くんが家に連れて帰ってくれたのか…。
「う、ん…あれ?」
不意に見慣れないものが目にとびこんできた。
「雅紀?と、大野くん?」
…が、何で俺の部屋に?
大野くんが額に手を当ててきた。
綺麗な手だなぁ~。
この手が、俺の……うわあっ⁉は、恥ずかしい…。
あまりの恥ずかしさに、大野くんが心配してくれてるのに、素っ気ない態度をとってしまった。
ごめん、大野くん。
智「そういえば、相葉。さっき言いかけてたの何だよ?父ちゃんが、何?」
雅「ああ、そうそう。俺がドア開けたらさ、大野のお父さんがバスローブ着てて。俺と目が合ったら、隠れたんだけどな。それと、潤おじさんもYシャツの前が肌蹴ててさ。
潤おじさんは、打ち合わせって言ってたんだけど…。変だよな?普通は、そんなことないよな?って思ってお前に聞いたんだよ」
智「ふーん…、そっか…」
へえ~。
雅紀、ホテルで父さんたちの部屋に行ったんだ?
「ちょ、ちょっと待って?!雅紀、もう一回今のとこ言って?」
ガバッと起き上がったせいで、頭がクラっときたけど、それどころではない。
雅「“普通はそんなことない”?」
「違う!その前の…」
雅「あ?ああ、“大野のお父さんがバスローブで…”」
聞き間違いじゃなかった…。
俺は一縷の望みを抱いたことを嘆いた。
そして、俺の意識が再びプツリと途絶えた。