第8章 若葉のころを過ぎても
「あ、そういえば舞さんは?」
翔のお母さんのことを俺は“舞さん”と呼んでいる。
なんかさ、翔に瓜二つ過ぎて、おばさんって呼び辛いんだよねー。
智「ん?ああ、氷枕作るって言ってたぞ」
「ふーん…」
会話、続かねー。
大体さー、こいつのこと避けてたからさー。
あーっ!沈黙が……気まずい。
なんか、話すことないか?う~ん、う~ん…
智「相葉は、何であそこにいたんだ?ひょっとして、翔をつけてきた、とか?」
「うっ…。そ、んなわけねえじゃん。た、たまたまだよっ。ほら、あれ、俺、ケーキに目がねえからさー。たまたまってすげえな!」
智「ふーん…。“たまたま”か…。それなら、すげえよな?ははっ」
俺も翔のこと言えないくらいわかりやすく動揺してるぜえ!
ぜってえ、つけたことバレてる?!
わかってて言わないって…マジで!ムカつくやつだな‼
智「なあ、聞かねえの?」
「???…何を?」
智「んあ?俺たちがあそこに居たわけ。知りたいんじゃねえの?」
知りたい!
そりゃ、知りたいさ。
でもでも…聞き辛いし。
それに、イヤな予感するし?
智「実はな…」
俺が躊躇ってるあいだに、大野が話始めた。