第6章 真夏の熱 ♥︎ 〜赤葦京治〜
赤葦が考えていた通り、保健室は空調が効いていて涼しかった。
『ふぁ…ちょっと寒いくらいだね』
心が少し身じろぐ。
「そうかもしれないですね…。保健の先生を呼んでくるので、心さんは先にベッドに横になっててください」
赤葦がそう促すと、心は素直に一番奥のベットへと横になった。
『京治くん…』
「何です?」
『はやく、もどってきてね…』
眠いのか、あまり呂律のしっかりしていない口調で心が話す。
そんな心に赤葦は頬を緩ませ、ベットの傍へ来るとそっと心の頭を撫でた。
「分かりました…すぐ、戻ってきますね」
そしてゆっくりと、保健室を後にした。
心はぼーっと天井を見つめながら布団にくるまる。
だんだんと眠気が押し寄せてきて、数分も経たないうちに寝息を立て始めた。
「心さん、保健の先生いないみたいです……って、寝ちゃってる」
十数分経って赤葦が戻ってきた頃には、心はすっかり寝入った後だった。
赤葦はそっと、ベットの傍に椅子を寄せて、心の寝顔を眺める。
体温が高いのか、心は頬がほんのりと紅くなって、寝苦しそうだった。
「心さん…頼むから、無理しないでくださいよ…」
そんな心を見て、赤葦が弱々しく声をかける。
愛おしそうに心の髪を撫でる赤葦は、いつもの淡々とした様子はなく、年相応の顔をしていた。
『……けぃじ…くん、ごめんね…』
「心さん…すみません、起こしたみたいで…」
赤葦が申し訳なさそうに眉を下げると、心はううん、と首を振った。
『京治くん…おふとん、一緒入って…』
「え、でも…」
『だって…寒いから』
いいでしょ?と、赤葦の手を引く心はまるで子どものような目をしていた。