第6章 真夏の熱 ♥︎ 〜赤葦京治〜
「ちょっと落ち着いたら、保健室行きましょう。あそこはエアコンもかかってるし…少し休んだ方が良さそうです」
しかしすぐに元の淡々とした口調で話すものだから、心は拍子抜けしてしまった。
「俺も付き添いますから」
『でも…練習は…』
「心さんの方が大切ですよ…」
言葉の端々に、赤葦が心の事を大切に思う気持ちが見え隠れして、心は途端に照れくさくなってしまう。
「それじゃあ…木兎さんたちに事情話してきます。それ、ちゃんと飲んでてくださいね」
それだけ言い残すと、赤葦は足早に体育館へと戻っていった。
『京治くん…優しいなぁ…』
首元に濡らしたタオルを当てながら、少しずつスポーツドリンクを口にして、心が呟く。
それに答えるかのように、蝉が一斉に鳴き声を上げだした。
『なんだか…眠くなってきたなぁ…』
心がうとうとと瞼を閉じていると、体育館の方から木兎の喚く声がする。
「心ー!!!!大丈夫かぁー!!!気付いてやれなくてごめんなぁ!!!」
すぐそこの入口から、木兎がひょっこりと顔を出し、心に向かって叫ぶ。
『この距離ならそんなに大声じゃなくても聞こえるって…』
少し困ったように心が笑ってみせると、木兎がそうだな!と納得したようだった。
「木兎さん…あんまり騒ぐと心さんが余計に体調悪くなるのであっち行っててください」
そんな木兎を一喝してから、心に向き直った赤葦は、手に心の荷物を持っていた。
「じゃあ心さん、行きますよ」
『あ…うん、わかった』
心が立ち上がるのを、赤葦が手をとり支える。
「心、むりすんなよ!」
保健室へと向かう心の背中に、木兎がもう1度叫んだ。