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Love Delusion…

第5章 Sugar honey* ♥︎ 〜月島蛍〜



その日の放課後、部活をしていると、突然田中先輩と西谷先輩が騒ぎ始めた。

「おい、龍!あの子誰だ!?」

「いや、のやっさん、俺も知らねっす!!」

ふたりが騒ぎ出したことで、みんな部活どころではなくなってしまい、きょろきょろとあたりを見回す始末。

それは僕も例外ではなくて。

体育館の入口でおろおろと困っている結木を見つけた。

「…ツッキー、あれって結木さんだよね??」

山口が僕に話しかけてきたことで、部員の注目は僕に集まってしまった。

「月島ぁ!裏切ったのかぁ!!!」

西谷先輩の声がするけど、それに軽く頭を下げてから、結木の傍へと向かう。

『ご、ごめんね…なんか、騒ぎにしちゃったね』

僕が駆け寄ると、結木がすごく申し訳なさそうに眉を下げながら話した。

「気にしないで、ちょっと血の気の多い人たちがいるってだけだから」

それよりも場所を変えようか、と結木を体育館入口から遠ざける。

すぐそばの水飲み場まで連れて行ってから、結木を見ると、何か手に持っているみたいだった。


『あの…今日は、ありがと』

一瞬、何を言っているのか分からなくて、頭にはてなを浮かべたけれど、すぐに授業中のことか、と納得して首を振った。

「あんなの、お礼を言われるようなことじゃないから」

『それでもだよ〜、私はすごく助かったから!
それでね、これ…』

そう言うと、結木はリボンのついた小さな紙袋を手渡してきた。
手のひらに収まるくらいの、小さなものだ。

包みを開くと、中から水色の下地に黒猫の書かれたパッケージの消しゴムがひとつ、入っていた。

『ほんとに、大したものじゃないんだけど…どうしても渡したくて』

それだけだから、と照れくさそうに笑うと、結木は行ってしまった。

その後の部活はみんなから、からかわれて、なかなか手につかなかったのは言うまでもない。

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