第5章 Sugar honey* ♥︎ 〜月島蛍〜
『あっ…月島くん!』
翌日の放課後。
山口は嶋田さんのところへ行って、ひとりでふらふらしていると、後ろから声をかけられた。
結木だった。
「……君って、毎日それ食べてるの?」
結木は、また棒付きのキャンディーを舐めながら下校しているようだった。
『えっ?うん、そうだよ!甘いもの好きだから、いつもたくさん持ってるの』
にこにこと笑いながら得意げにカバンの中の大量のキャンディーを見せてくる。
1…2…3……軽く、10本は入ってる。
「はちみつ味ばっかり…よく飽きないね」
『飽きないよ〜♪すきだもん!それに、これ美味しいんだよ〜』
あっ、そうだと言いながら、結木は僕に向かってキャンディーを1本、差し出してくる。
『食べてみたら分かるよ!あげる!』
半ば強引に僕にキャンディーを握らせると、結木はじゃあね、と先に歩いて行ってしまった。
ひとり残されてしまった僕は、仕方なく手渡されたキャンディーを口に含む。
ふわっと甘いはちみつが口いっぱいに広がっていく。
その甘さは、思ってたよりしつこくなかった。
……認めるしかなくなってしまった。
心の中にふわふわと甘さが漂う。
「…なんで、君なんだろうね」
誰に尋ねるでもなく、ただ。
僕はひとり甘いはちみつに酔ったまま、まだまだ明るい空を見上げた。