第4章 貴方は私のヒーロー ♡ 〜及川徹〜
〜及川side〜
心ちゃんの家の最寄り駅まで戻ってきた頃には、彼女は少し冷静さを取り戻していた。
ごめんね、と申し訳なさそうに呟く心ちゃんに大丈夫と返事をすると、少しだけふわりと笑ってくれた。
「…ちょっとだけ、寄り道しよっか」
『えっ?』
不思議そうな心ちゃんと、俺は駅のそばにある小さな公園へ足を踏み入れた。
ブランコと、滑り台。
シーソー…ベンチ、鉄棒。
それが窮屈に並べられた、本当に小さな公園。
心ちゃんがベンチに座ったのを確認してから、俺はブランコに腰を下ろした。
『…なんで、そっち??』
「いやー!及川さんはね、何しても絵になるんだよ!」
適当なことを言いながら、勢いをつけてブランコをこぐ。
視界が揺れて、空が見える。
ーー綺麗だなあ。
『…及川くん、ありがとうね』
心ちゃんが重苦しく言うものだから、俺は当たり障りのない世間話をした。
昨日の晩ごはんがなんだったとか、好きな歌手だとか。
その度に彼女は切なそうに笑っていた。
ふいに、視線が合うと、心ちゃんは意を決したように口を開いた。
『……及川くんは、私のヒーローだよ。
今日は本当にありがとう。私、忘れない。
だから、また…何かあったら助けてね』
「…何かって、何?」
『何かは、何かだよ』
「……それは、できないかなぁ」