第4章 貴方は私のヒーロー ♡ 〜及川徹〜
〜心side〜
及川くんの顔を見た瞬間、安心と羞恥心から涙が止まらなかった。
とてもじゃないけど、このままひとりでなんて居られない。
「大丈夫か…?」
及川くんが来た方向から、岩泉くんまで駆けつけてくれて、もう胸がいっぱいだった。
『ひ、ぅ…怖かったよぉ…』
ますます泣き崩れる私を見て、ふたりが焦る。
だけど、涙は止まりそうにない。
「…岩ちゃん、ごめん。
俺、今日心ちゃんと、学校休むわ」
尋常じゃない私の様子に、及川くんがぼそりと言った。
「……おう」
いつもは厳しいはずの岩泉くんまで、神妙な顔つきで私を見つめる。
『そ…そんな、大丈夫…ごめん、大丈夫だよ』
言ってはみたものの、涙は止まらないし、体の震えも収まらない。
まだまだ、触られた感触に寒気がする。
「大丈夫じゃないでしょ?
及川さんには、甘えていいから」
ぽん、と頭に優しく手のひらが被さって、ふわりと笑いかけてくれる、及川くん。
「っ……ありがとう…」
及川くん、私にとってあなたはヒーローだよ。
困っている時に助けてくれて、笑顔を向けてくれて。
それだけで、私は嬉しい。
次の駅で降りて、家の最寄り駅につくまで、及川くんは私の手を握っていてくれた。
綺麗だけど、ところどころ傷があって、テーピングがされている、彼の手。
対して、小さく頼りないふにふにとした私の手。
及川くんの手は、紛れもなく男の子の手だった。