第4章 貴方は私のヒーロー ♡ 〜及川徹〜
〜及川side〜
人身事故かなんだか分かんないけどー?
この及川さんを待たせるだなんて、本当、やってらんないよね〜。
「ねー、岩ちゃんもそう思うでしょー??」
「黙れクソ川。クソがうつる」
「酷い!!」
もー、相変わらず岩ちゃんは酷いなぁ〜。
ふと、電車の扉に目をやる。
「…岩ちゃん、あれ…心ちゃんじゃない?」
扉の前で、人の波に押しつぶされながらも、小さく震える心ちゃんを見つけた。
「なんか、様子おかしくねぇか?」
岩ちゃんが少し怪訝そうに眉をひそめた。
確かに彼女は泣きそうな顔で、必死に何かに耐えているようだった。
「ーーおい、クソ川…、あれ痴漢だ」
岩ちゃんに言われて、改めて気がついた。
「っ、いってくる!」
そこからは、人の波をかき分けて。
ただ心ちゃんを助けることだけを考えた。
「…ちょっと、おじさん」
手首をひねりあげてやると、そいつは小さく悲鳴を上げてこっちを見た。
そりゃそうだよね、俺ほどの美形…や、長身の男が睨んでたら、怖いよね。
「次の駅で、降りよっか」
「お、俺は何もしてねぇぞ!!!
こんなクソガキに、手なんか出すか!!!」
そいつは俺の手を振りほどくと、そそくさと別の車両へと逃げていった。
「何、あれ…みっともない」
大丈夫?と心ちゃんに声をかけてみると、その目にいっぱい涙を貯めてて。
『ぉ、及川くん……っ、こ、こわかっ…』
俺の顔を見て安心しちゃったのか、ぽろぽろと泣き出してしまった。