第3章 ロールキャベツ男子 ♥︎ 〜菅原孝支〜
一気に身体が怠くなって、ぼーっとしてくる。
教室に俺の息づかいがこぼれる。
『……あの、菅原先輩…』
あれ、まだ結木の声がする…?
ふと、声がした方に目をやる。
『その…えっと……』
そこには、さっきまで俺が頭の中でぐちゃぐちゃにしていた、結木がいた。
「……えっ、え?
えと…いつから、いた…?」
顔が熱い。
見られた。
女の子に、自慰を。
しかも、好きな、子に…。
「…じゃなくて、あれ…鍵…」
そうだ、鍵をかけたはずだ。
なんで、結木が。
『…えと、はじめから…いました、よ?
菅原先輩、が…ここに入るのが見えて
どうしたのかなって思ったので…後ろの鍵は
開いていましたし』
開いてたのかよ!
俺のバカ!!
「…そ、う。
ご、ごめんな!こんな…ところ、見せちゃって…
ほ、ほら!授業行くべ」
何事も無かったかのように、笑顔を向ける。
彼女の顔は、真っ赤で。
視線は、俺の腰あたりに落とされていた。
『…もぅ、授業始まっちゃいましたよ』
ずくん。
結木の、少し潤んだ瞳が、俺を見つめる。
いつものような、ミサイルみたいなテンションはどこにもなくて。
…うっすらと、性をみせる表情。
俺の心の、黒い部分がどろどろと広がっていくような錯覚。
「……じゃぁ、あそぼう?」
気がついたら、結木のことを抱き締めて、そう言っていた。